
桜が咲くと暖かくて風のない日にはじっとしていられなくなる。春の女神ギフチョウが年に一度姿を現すからだ。このチョウは結構気難しくて、幼虫が食べるカンアオイが充分あるところにしか生息しない。昔は高尾山あたりにもいたそうだが、カンアオイが少なくなった最近では、神奈川界隈では、相模原市藤野の石砂山(いしざれやま)のギフチョウ保護区にしかいない。この時期の石砂山にはギフチョウを見に大勢が押しかけることになる。
この前の日曜日、天気予報では晴だというので、それっとばかり行ってみたら晴れ間が出ず気温も10度にもいかず寒い。全く姿が見えずすごすごと帰るほかなかった。6日は暖かい好天で絶好の観察日和だったがあいにくゴルフの約束がありいけなかった。チョウが気になるせいかゴルフのスコアは散々だった。
今日9日は風もなく暖かい晴だとの予報を頼りにいそいそと出かけた。山頂には同好者が何人かカメラを手に来ている。いたっ。オスだ。止まるのを待ってカメラに収める。花に止まって蜜を吸うポーズで撮りたいが花にはなかなか止まらない。まあいいか。この辺で手を打とう、と山を下り始めた。来た道をそのまま下っていると思っていたのに、どうも様子が違う。道を間違えたと気が付いたけど、何とかなるだろうと降りていき、車を停めたとおぼしい方向に歩いてみたが見覚えのある道には出ない。途中で出会った森林管理人らしいおじさんに道を聞くと「あんたこのまま行くととんでもないところに行くよ」という。幸いおじさんは仕事を終わったところで「これから帰るから途中まで一緒に連れて行ってやろう。あんたが車を停めたところは帰り道だから車に乗せてやる」という。助かった。石砂山は小さい山だけど、それでも充分遭難の可能性があることを知った。山を甘く見てはいけないことを身を持って体験した。